■美容トレンドの最前線を走り続けるメディア「Cinderella Fit」。
その代表を務める高部氏が今、熱い視線を注いでいるのが日本古来のお寺や神社にお参りする「寺活(てらかつ)」です。
サウナブームなどで「ととのう」感覚が一般的になる中、なぜ美容のプロは「寺活」をおすすめするのか? 自身の体験談や、内面から輝くための「隙間」のある生き方、そして目指すべき「オーガニック女子」像まで、たっぷりと語っていただきました。内側から美しくなりたいすべての女性に贈る、究極の心のクレンジング・インタビューです。
(聞き手:「寺イク?」編集部)
■美容業界の歪みから生まれた、「人にフォーカスする」メディア
──まず、「Cinderella Fit」というメディアを立ち上げた経緯と、大切にされているコンセプトについて教えてください。
高部代表(以下、高部): もともと10年くらい、温浴サウナ、レストラン、エステ、リラクゼーションが入った複合施設の支配人をやってたんですね。予約やフロント業務も担当していたんですが、エステ業界って実はものすごく離職率が激しくて。平均勤続年数が2年いかないこともザラなんです。
こんなに人を癒やすいい仕事で、みんないい子なのに、なんで疲弊してしまうんだろう。そう思った時に、お客さんが来ないとか、現場がいつも人手不足だとか、そういう業界の歪みを、いた立場として助けられるとしたら、プラットフォームをつくることなんじゃないかと。

──なるほど、業界の課題解決が起点だったんですね。
高部: ええ。他にも素晴らしいメディアさんはありますが、僕は徹底的に「人」にフォーカスしたメディアをつくりたくて。いいことも悪いことも「人」がするんで、取材記事も必ず店長さんやスタッフさんの顔写真を出すようにしてます。
やっぱりサービス業って、誰にやってもらうかが大事じゃないですか。高級店でも仲が悪そうだと幻滅するし、逆に安いところでも、スタッフさんが幸せそうだと、とんでもない多幸感に包まれることもある。結局「人」なんだなって。特にエステなどは外から中が見えにくい商売なので、「このオーナーさんがこんな思いで人を癒したいんだよ」ということを伝えるメディアでありたいですね。
■「強制リラックス」の限界。サウナの次に「お寺」を選んだ理由
──そんな美容の最前線にいる高部社長が、なぜ今「寺活」に注目されたのでしょうか?
高部: 仕事のプレッシャーもかかるし、「やすらがないと」とは思うんです。ここ数年でサウナブームなどもあって「ととのう」感覚が一般的になりましたよね。僕もサウナは好きでよく行っていたんですが、ある時、強制的にリセットしようとしすぎて、逆に自律神経が疲れてしまうようになったんです。

──分かります。無理やり「ととのえよう」として逆に疲れてしまうこと、ありますよね。
高部: そうなんです。休みたいのに無理やり脳みそを叩き起こすような感じになってしまって。戻るのも早くなるんですよね。そんな時に、ふと地元の七福神のお寺が近所にあるなと思って、行ってみたらどうだろうと。
今でも続けているんですが、10円玉を両替して、ジップロックにいっぱい入れてるんですよ(笑)。それを持って、ご本尊と、菩薩様と、七福神様と、大体3ヶ所ぐらい回るんです。
これ言うとちょっとマニアックなんですけど、「売り上げ伸ばしたいな」って時は大黒天、「クリエイティブなことがやりたいな」って思うと弁財天、戦わなきゃいけない時は毘沙門天のところに行ったり。「神様お願い」というよりは、「今からこういうのあるから、行ってきます」と部長や課長に挨拶に行くような感覚に近いですね。
行くとやっぱり気持ちがスッキリするんです。でも、行かないと気持ち悪いという副作用もない。それがすごくいいなと思って。孤独な経営者の「お守り」。覚悟が決まる寺活スタイル。

高部氏提供「七福神巡り地図」
──社長ご自身にとって、「寺活」はどのような時間になっていますか?
高部: 僕は無宗教なんですけど、この仕事してるとある程度の覚悟がいりますし、孤独ですよね。年齢的にもいつまで第一線で働けるかわからない。そんな時に、覚悟みたいなものを決めた時の厳しさを受け止めてくれている気がします。
さっきご本尊の話が出ましたけど、これカッコつけじゃなくて、お寺に行くと「今を生きてるんだから、長生きしたいとか明日があるって思わないで、素直に生きよう」という心になる気がするんですよね。
──「今を十分そのまま向き合う」という感覚ですね。
高部: ええ。こんな平和な国なのにみんな逃げたがるけれど、意外と正面でやった方が楽だし、ストレスもない。とんでもなく目も当てられないことって、実は起きないんじゃねえかって思うんですよね。
お寺に行って、真正面から向き合うような「お守り」みたいな感覚を持っていると、逃げずに済むというか、後回しがなくなる。一息ついて、「大丈夫だよ」って覚悟を後押ししてくれるような存在ですね。
■絶望感からの解放。「隙間」を作る生き方が美しさを生む
──お寺に行く習慣を持つ前と後で、決定的に変わったことはありますか?
高部: うーん、「絶望感」みたいなものがなくなりましたね。「ダメだ」って思うことがなくなった。置いていかれるとか、生きることが辛いとか、そういうことに固執しなくなりました。欲も減りましたね。よく見られたいといった煩悩的なものが無意味だなって思うようになりました。
だって、お寺に行くと400年とか800年の歴史があるわけじゃないですか。この木造の仏像を数百年もお参りしてる人がいることを考えれば、現代の一瞬の情報に惑わされて欲にまみれてる自分が、真剣に滑稽に思えてくる。襟を正したい気持ちになりますね。

高部氏提供「円通寺」
──寺イク?では、お寺でやすらかな境地になり、リフレッシュできることを「やすらギまる」と呼び、「オフする」「没頭する」「ゆだねる」という3ステップを提唱しています。この3ステップについてはどう感じられますか?

高部: そのステップ、すごい共感します。特に「バランス」が大事だと思うんで。
例えば、もう本当に落ち込んで超ネガティブなモードに入ってしまっている人は、また違うアプローチが良いかもしれない。でもそうじゃなくて、「柔軟だけど、ついついいい人で頑張っちゃって疲れちゃうよ」とか、「日々の情報量やスピードに疲れてしまっている」という人にとっての、まさに「お薬」みたいな感じで(このステップで)行くのはすごくいいアプローチだと思います。
──なるほど。素直で頑張り屋さんな人にこそ、向いていると。
高部: そうなんですよ。根本的に、やすらげることって自分のためではあるんですけど、「人に尽くせる人」がやすらげる気はするんですよね。自分に対しての欲って、いくらやっても終わらないじゃないですか。だから僕はなるべくそういうのはいらないなと思っていて。「誰かのために生きている」ような感覚になった時が、本当にやすらげる気はするんですよね。
そういう意味でも、この「やすらギまる」ステップは、現代で頑張っている多くの女性たちにスッと受け入れられるんじゃないかなと思います。
──誰かのために生きている感覚が、本当のやすらぎにつながるんですね。
高部: そうですね。あと、僕が中年なので次の世代に一つだけ継承したいなと思うのが、「隙間」なんです。こんがらかっちゃった情報過多な時代に、少し昭和チックな「隙間がある生き方」を教えてあげたい。みんな隙間を埋めることばっかり考えすぎてるけど、僕、寺活ってあえて「隙間をつくること」のような気もするんですよ。
■目指すは「凛としたオーガニック女子」。物を持たない美学
──美容文脈で捉えたとき、これからの「寺活」はどのようなカルチャーになっていくと思いますか?

高部: ヨガやピラティスは海外から来たものですが、「寺活」は日本特有の身近な癒やしとして定着する可能性があると思います。
私が理想とするのは、お寺の凛とした空気が似合う女性。「オーガニック女子」みたいな感じで。化粧は薄く、軽いファンデーションとリップだけなんだけど、お寺で手を合わせる姿が凛としていて美しい。そういう日本女性らしいかっこよさですね。
──内面から滲み出る美しさですね。
高部: そう、「物を持たない美しさ」です。買わなきゃというストレスから解放されて、実用最低限の超ミニマルなスタイル。流行り廃りがないものを着ているような。そういう人たちに刺さっていくと、すごく文化として定着していく気はしますね。
■答えは自分の内側にある。焦らず「自分と向き合う」時間を
──最後に、読者に向けて「美しくなるための寺活」のエールをお願いします。
高部: なんだろう、そんなに迷ったり選ばなくても、「答えは内側にある」みたいな感じでしょうか。
仏像やご神体と向き合うことは、自分の中の宇宙感みたいなものと向き合うこと。20年以上生きていれば、自分の中にもう一人の自分がいるはずなんです。そこにもう一回話しかけてみれば、答えは結構自分の内側にあるから、焦らなくてもいいんじゃないかなって。
外に答えを求めたり、コントロールできない他人に求めるのではなく、一歩お寺に入って自分と向き合う時間をつくる。そうすれば、答えは自然と自分の中から出てくる気がします。
──内側から美しさが滲み出てくるような、素敵なお話をありがとうございました。

PROFILE
高部直哉(株式会社BEAUTY&TECHNOLOGIES 代表)
複合的な美容サロンの支配人を経て、美容業界の課題解決を目指し、メディア&プラットフォーム「Cinderella Fit」を立ち上げる。「人にフォーカス」した独創的なメディア運営で、多くの美容プロフェッショナルやインフルエンサーから支持を集めている。
文・KENLOCK(寺イク?)
編集・KENLOCK(寺イク?)