今回は、全国の寺社と人を繋ぐプラットフォーム「寺社フレンズ」を主宰する草野さんにインタビュー。そのあまりに波乱万丈な半生と、そこから導き出された、誰でも簡単にできて、しかも効果絶大な「やすらギまる」方法について、たっぷりと語っていただきました。

草野俊哉(「寺社フレンズ」主宰)
明治大学文学部卒。18歳から25歳までの7年間の内、2年間は海外旅行(ヨーロッパ・中南米・東南アジア)。21歳の時には、地球の歩き方「東南アジア編」でゴーストライターを経験。起業を志し、土木業界で送電線の測量などに従事した後、沖縄音楽の学校を設立し生徒数3000人規模へ成長させるも、52歳で追い出される。その後、ブラックな葬儀社、結婚相談所、アニメ会社など職を転々とする中で「僧侶・神職専門の結婚相談所」に関わり、寺社業界の課題に直面。現在、寺社と人を繋ぐプラットフォーム「寺社フレンズ」を運営し、また寺社で興行する革命のサーカス団・GOLD CIRCUSの顧問として、全国の寺社を奔走サポートしている。
(聞き手:「寺イク?」編集部)
■鉄塔の上から、沖縄音楽の熱狂、そして…
──まず、草野さんのこれまでの経歴がすごすぎると伺ったのですが(笑)、簡単に教えていただけますか?
草野さん(以下、草野): いやあ、本当に好き勝手に生きてきましたからね(笑)。最初は土木の世界、40年前です。中卒か高卒しかいないような現場に飛び込んで、20代の頃は送電線の測量で山の中の鉄塔に登ったりしてました。
その後、ひょんなことから沖縄音楽にハマりまして。まだ誰も知らない頃に仲間と、沖縄音楽教室&沖縄音楽コンサート活動&沖縄楽器製造を始めたら、これが当たっちゃった。10年経たないうちに生徒数3000人、講師50人という規模になって大成功。20代、30代でバカスカ稼いじゃった(笑)。

──ええっ、3000人!?すごい成功ですね!
草野: でもね、成功すると派閥争いとか起きるんですよ。結局、創業者なのに52歳の時に追い出されちゃって。その後、50過ぎて雇ってくれるところなんてなくて、やっと入れたのがブラックな葬儀屋さん(笑)。まあ、そんなこんなで、結婚相談所を始めたり、アニメ会社に行ったりと、本当に色々ありました。
■業界の「タコツボ化」を憂い、寺社フレンズを設立
──そんな波乱万丈な人生を経て、なぜ今「寺社」の活動に注力されているのでしょうか?
草野: ご縁があって「お坊さん専門の結婚相談所」に関わることになり、多くのお坊さんと繋がったのがきっかけです。
そこで気づいたのが、業界の「タコツボ化」なんです。例えば、お寺の周りには葬儀屋さん、墓石屋さん、相続の税理士さんなど、色々な業者がいる。でも、みんなお寺を介して繋がってるだけで、横の繋がりが全然ない。

──なるほど、みんなバラバラなんですね。
草野: そう。「お寺に人が来ない」って悩んでるお坊さんが、お葬式に関係ある檀家さんにしかイベントの案内を出さない、なんてこともザラで。いやいや、お付き合いのある業者さんたちに「友達連れてきてね」って声かければいいじゃない、と。
みんなバラバラで困ってるなら、まずは握手するだけでいいんじゃないの?と。せっかくできたお坊さんたちとのご縁を切らすのももったいないし、それなら私が繋がるための「入れ物」を作ろうと思って立ち上げたのが「寺社フレンズ」なんです。
──寺社の現状をどう見ていらっしゃいますか?
草野: 正直、斜陽産業の面と、逆に今注目されている「ブルーオーシャン」の面と、両方あると思ってます。厳しい現実もありますが、全体の5%〜10%くらいは、新しいことにトライしている元気なお寺さんもある。私はそういう前向きなお寺さんたちと仲良くして、世の中と繋いでいきたいですね。
■原体験は「おじいちゃんを喜ばせたい」一心で
──そこまで寺社に入れ込む、草野さんご自身の「原点」はどこにあるのでしょう?
草野: 母が「寺娘」だったので、子供の頃、母の実家のお寺によく遊びに行っていたんです。親戚が集まると、まずはみんなでお経を読む。子供ながらに、訳も分からず一緒に読まされてましたね。
でも、そうやって読んでると、おじいちゃんたちが喜ぶんですよ。「僕、お経読んでるよ!」ってアピールすると、すごく褒めてくれる。
──おじいちゃんが喜んでくれるのが嬉しかったんですね。
草野: ええ。それが嬉しくて。「人を喜ばせたい」という気持ちが、結局は今の活動のスタート地点なのかもしれませんね。
■「鉄塔の上」に比べれば、日常はすべて「ととのってる」!?
──寺イク?では、お寺で心をととのえることを「やすらギまる」と呼んで推奨しています。草野さんは、普段どんな時に「やすらギまる」感覚になりますか?
草野: うーん、実は私、お寺や神社に行ったからといって、特別に「やすらかな気持ちになった!」という感覚になることはあんまりないんですよ(笑)。
──えっ、そうなんですか!?意外すぎます!
草野: だって、若い頃に登ってた鉄塔なんて、30メートル、40メートルの高さで、風がビュービュー吹いてるんですよ。単に怖いだけじゃなくて、風で体が持ってかれる。あれを思えば、足元がしっかりしてるだけで、もう全然安心でしょ(笑)。
海外でも、フィリピンの危ない地域に行ったり、ゲリラと友達になったり(笑)。そういうトンチンカンな人生を送ってきたので、それに比べれば日本の日常なんて平和そのもの。普段から勝手に「やすらギまっちゃってる」のかもしれませんね。

【その他、危ない地域で遭遇した危ない経験の数々】
・メキシコの田舎で風土病に罹患
・アマゾン河上流地域(ペルーのアンデス山脈)で風土病に罹患
・ボリビアで食中毒と腸チフスを同時に罹患
・ブラジルで、歩道に突っ込んできたバスに跳ね飛ばされ、右目と左目が一直線になりかける
・エルサルバドルのプンタレーナス市(内戦中だったので、時々、市街戦が時々起きていた)
・フィリッピンのスールー諸島(イスラム系ゲリラと海賊の本拠地)
・フィリッピンのミンドロ島(共産ゲリラの本拠地)
■結論!寺活初心者は「読経」一択でいい
──なるほど、基準が違いすぎました(笑)。では、そんな最強メンタルの草野さんが、あえて一般の方にオススメする「寺活」とは?
草野: 私は正直、座禅や写経は勧めません。「読経(どきょう)」一択です。お経を声に出して読むこと。
──なぜ読経なんでしょうか?
草野: やっぱり体を使わないとダメです。声も出して。10分間、お経を声に出して読み続けるだけで、心身の感覚がだいぶ違いますよ。
──さきほど、お寺とか神社に行って、特別「やすらギまる」みたいなものはないと伺ったんですけど、お経を読むとさっきいったあの感覚はあるんですか?
草野: やすらぎますよ。
──やすらぎもあるんですね。
草野:言ってみれば、「お寺でカラオケ」みたいな感覚でいいんです。
──お寺でカラオケ!その心は?

草野: お経って、現代語訳してみると、仏様の世界はこんなにいいぞ、とか、すごくポジティブで面白い話が書いてあるんですよ。それを声に出して読むことは、ポジティブなエネルギーを体に取り入れること。
あと家で一人で読むのもいいですけど、やっぱりお寺に行って、みんなと一緒に読んだほうが「ライブ感」があって楽しいです。
──確かに、みんなで声を合わせると没入感がありそうですね。
草野: そうそう。だから、初心者の方は、そういう読経体験ができるお寺のイベントなんかに参加するのが一番手っ取り早くて、効果的な「やすらギまる」体験だと思いますよ。
■「賽銭箱の向こう側」へ。前向きな5%のお寺と作る未来
──ただ、実際にお寺側がそういった一般の方の読経体験を受け入れてくれる「土壌」というのは、今後つくれそうでしょうか? 草野さんは現場の厳しい現実もご存知だと思うのですが。
草野: 正直、そこは厳しいと思います。厳しいですね。だから、全体の5%くらいのお寺しかやってくれないだろうと。
──やはり現実は厳しいのですね。
草野: でも逆に言うと、その前向きな5%のお寺さんに「読経体験やりませんか?」って提案したら、やってくれるところは多いと思いますよ。
──ありがとうございます。それなら、その前向きな「5%のお寺さん」たちと、寺イク?と寺社フレンズの合同企画みたいな感じで、「サウナの次にやすらぐ何かが欲しい」という世の中の人を集めた読経体験イベントをやるのもいいなと思います。
草野: それはいいですね。僕もね、いかにして「賽銭箱の向こう側」に人を呼ぶかっていうのをずっと考えてて。正直なかなかいいアイデアがずっと思い浮かばなかったんですけども、「読経体験」はいいですね。ぜひやりましょう。
■残りの人生は、寺社のために。「いい人」で終わりたい
──最後に、今後の展望を教えてください。
草野: 私ももう64歳で、あと何年元気に動けるか分からない。そう考えた時、残りの人生の優先順位はやっぱり「お寺」なんです。
理由は簡単で、「いい人だと言われて死んでいきたい」(笑)。これだけ好き勝手生きてきたんだから、最後は誰かのために、特にお寺や神社のためにサポートをして、喜んでもらって終わりたい。それが本音ですね。

──本日は、素敵なお話をありがとうございました。まずは一緒に「読経」体験に行きたいです!
草野: ええ、ぜひ!「坊主バー」なんかでもお客さんと一緒に読経やってますから、今度行きましょう!
文・KENLOCK(寺イク?)
編集・KENLOCK(寺イク?)