ラジオ構成作家 清水麻衣子さん
ジュエリーデザイナー、出版社の編集者を経て、オーストラリアへ留学。帰国後は人気ラジオ番組の構成作家として20年以上第一線で活躍する清水麻衣子さん。
時代の空気を敏感に感じ取る彼女が今、熱い視線を注いでいるのが「寺活」です。先日、編集長 KENLOCKが出演したJ-WAVEのラジオ番組『MIDDAY LOUNGE』で清水さんが構成を担当されていたご縁から、今回のインタビューが実現しました。
なぜ今、お寺なのか? 現代人が抱えるリアルな空気感と、日本人が持つ精神性、そしてお寺が持つ可能性について、『寺イク?』編集長 KENLOCKが迫りました。
■ラジオ番組出演から始まったご縁。ミステリアスな雰囲気の裏側。

KENLOCK(以下、編集長): 本日はよろしくお願いします。先日、私が出演させていただいたJ-WAVEの番組『MIDDAY LOUNGE』では大変お世話になりました。ナビゲーターさんも「お寺でととのう」ことにもすごく共感してくださって、放送の反響も大きかったです。
清水麻衣子(以下、清水): こちらこそ、ありがとうございました。X(旧Twitter)でもリスナーさんの投稿がありましたし、ナビゲーターもお寺にまつわる経験をお話しされていて、面白かったですね。
編集長: 清水さんが構成作家として「新しいととのえ方」として寺活に目を向けてくださったことが嬉しかったです。今日はプロの視点と、個人としての感覚の両面からお話を伺えればと思うのですが、まず清水さんご自身がすごく雰囲気があるというか、ちょっとミステリアスな感じもして気になっていまして(笑)。ラジオの世界に入る前は、全く違うお仕事をされていたんですよね?
清水: そうなんです。結構長くなりますよ(笑)。もともとは美大でテキスタイルを学んでいたんですが、なぜか就職したのはジュエリー会社でした。デザイナーとして採用されましたが研修で販売もやらされて。でも、やってみたら販売の才能があったみたいで(笑)店長にまでなってしまいました。 その後念願のデザイナーにもなれました。
編集長: すごいですね! 入社早々大抜擢じゃないですか。
清水: ところがバブル崩壊の影響もあって社内の雰囲気がどんどん悪くなり、3年がんばったところで辞めてしまいました。その後は、ご縁があって出版社で働くことになったんですが、料理本を作ることを一通り学んだあと、今度はオーストラリアに住んでみたいと思って留学したんです。
編集長: 行動力がすごいです(笑)。帰国後、ラジオの世界へ進まれたきっかけは何だったのでしょうか?
清水: 当時、オーストラリアでの生活を面白おかしくブログに書いていたんですが、それを読んだラジオ制作会社の方が「あなたのブログの書き方はラジオに向いてると思う」と声をかけてくれて。新しいことに挑戦するのが好きだったのでやってみようかなと。それから気づけば20年ぐらいですね。
■「嘘はつきたくない」。見つめるブームの裏側の本質。
編集長: まさに「導かれるように」という言葉がぴったりなキャリアですね。長年、ラジオの現場で時代の空気を感じ取ってこられたと思いますが、企画を考える上で大切にしていることはありますか?
清水: うーん、「嘘はつきたくない」ということでしょうか。ただ流行っているからという理由だけで乗っかるのは、自分が納得できないんです。ブームがきっかけで大事なことに気づくならいいとは思います。なので、 私の想いもちょっと入れ込むようにして。ブームの裏側にある、本当にいいもの、大事なことに気づくきっかけになるようなものを取材するようにしています。
編集長: なるほど。表面的なトレンドではなく、その奥にある本質を見抜こうとされているんですね。
清水: 父が広告代理店勤務で、家には常にありとあらゆる雑誌があったんです。子供の頃からそれを見て、「あ、こうやって人を乗せようとしてるんだな」とか、仕掛け人がいることが分かっていたんですよね(笑)。その環境が、今の仕事にも役立っている気がします。
■海外で気づいた日本の精神性。お寺で目覚める「DNA」。
編集長: そんな本質を見抜く清水さんが今、「寺活」に注目されているのがとても興味深いです。きっかけは何だったのでしょうか?
清水: 私は元々哲学的なことを考えがちな方だと思います。子供の頃は心を閉ざして、一人で悶々と考えるような子だったんですけど、辛いことがあっても乗り越えた先に「悪いことばかりじゃない、何かのためにこれを味わってる修行なんだ」と俯瞰して見るようなところがあって。
編集長: 幼少期からそんな風に捉えられていたんですね。
清水: ええ。それが、オーストラリアに行った時に出会った、ちょっとスピリチュアルな人たちとの交流で確信に変わったというか。海外に出て客観的に日本を見た時に、日本の伝統文化や歴史に改めて興味を持って、「いい国だな」って思えたんです。
編集長: 海外に出たからこそ、日本の良さに気づけたと。
清水: はい。日本の仏教とかが持つ「調和」の精神ってすごくいいですよね。「お天道様が見てる」とか、自然と身についている根っこの部分。「人を思いやる、察する」みたいなことって、他の国の人にはなかなかできない精神性だと思います。でも今、ノイズが多い中でみんなそれが埋もれちゃってる。日本人のDNAに組み込まれている大事なスピリットを、もうちょっと取り戻してほしい、呼び覚ましたいっていうのはあるんです。

編集長: なるほど。現代社会のノイズが、本来持っている感覚を鈍らせていると。
清水: そう思います。オーストラリアでは大自然と都市のバランスが良くて、地面に寝転がって星空を見たり、自然と触れることで感覚が敏感になっていました。だから帰国した時、東京のノイズやモノの多さに吐き気がするぐらい受け付けなくて。
編集長: それほどまでに感覚が違ったんですね。
清水: ええ。そんな時、お寺に行くと一歩入った瞬間に空気が変わって、清らかになる。神聖なものを感じるとチャンネルが変わる感じがするんです。DNAに刻み込まれている何かが目覚める感じがありますね。
編集長: いや、すごいです。今のお話、まさに「寺イク?」でも大事にしている、鈴木大拙さんの『日本的霊性』にも通じるお話で、感銘を受けました。自然と自己を切り離さない感覚。それが現代人には必要なんだと。
※鈴木大拙『日本的霊性』とは?
世界的な仏教哲学者・鈴木大拙(1870-1966)が、戦時下の1944年に著した代表作。日本の精神史において、鎌倉時代に生まれた「禅」や「念仏」にこそ、日本人の魂の根源にある「霊性(れいせい)=宗教的な深い意識」が目覚めたと考え、その本質を論じた書です。
「自然と人間は本来一つである(対立しない)」という視点や、一度すべてを否定した上での深い肯定など、その思想は現代のマインドフルネスや環境思想にも通じ、「今を生きる私たちの精神的な土台」として再評価されています。
■若者の「スピ活」は希望。お寺はもっと「開かれたリアルな場」になれる。
編集長: 最近は、昔は揶揄されることもあった「スピリチュアル」という言葉が、「スピ活」として若い世代を中心に肯定的に受け入れられるブームが起きています。この変化について、どう感じていますか?
清水: 時代の変化を感じますね。若い子たちはピュアで、コロナ禍を経て自然の中で癒やされたいという欲求を素直に求めている気がして、いいなと思います。
編集長: 私たちも、伝統仏教の知恵で精神を取り戻すように行ってほしいけれど、お寺に行くのはハードルが高いイメージがある。カフェやジム、サウナみたいにライトな習慣としてみんなが行きたくなるには、どうすればいいと思いますか?
清水: お寺がもっと「開かれた場」になることが大切だと思います。昔はお寺が地域の集会所のように、子供が遊んで和尚さんが可愛がっているような場所でしたよね。今、特に都心は繋がりが希薄です。お寺はすごくいいスポットなんだから、公園のように集える場所、リアルなプラットフォームとして機能してほしいですね。
編集長: 確かに。今はお金を払わないと居場所がないような街の作り方になっていますもんね。
清水: そうなんです。災害が起こると助け合いが見直されますが、そういう時が来る前に、町のお寺が「みんなここで集まろう」という拠り所になっていたらいい。お金を使わずに人と人が繋がれて、孤独な人が悩みを打ち明けられる、そんな場所になってほしいです。
■これからの「寺活」へ。初心者とお寺、それぞれへのメッセージ。

編集長: 最後に、これから「寺活」を始めたいと思っている人へメッセージをお願いします。
清水: 気軽に、お寺でできることって探せばお料理だったり座禅だったりいっぱい見つかるので、難しく考えずに「楽しそうだな」という気軽さでどんどん参加してみるのがいいんじゃないですかね。
編集長: では、お寺側の方々へはいかがでしょうか?
清水: 若い子が本当に興味を持つような企画がもっと出てくるといいですね。例えば、お寺の音の響きがいい本堂で音楽を聴くコンサートとか。若い人たちは「お寺でそんなことしたら失礼だろう」という固定観念がないので、「こんなことしたい」とポップに突き抜けてくる気がします。それを和尚さんが受け入れてくれたら面白いですよね。
編集長: 寺活初心者とお寺側、双方への素敵なメッセージをありがとうございます。今日は長時間にわたり、濃密なお話をありがとうございました!
PROFILE
清水麻衣子(しみず・まいこ)
ラジオ構成作家。美大卒業後、ジュエリー会社勤務、出版社編集部を経てオーストラリアへ留学。帰国後、自身のブログをきっかけにラジオ構成作家となり、20年以上にわたり第一線で活躍。J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』、『ACROSS THE SKY』など数多くの人気番組を手がけ、時代の空気を敏感に捉えながらブームの裏にある本質を見抜く企画力に定評がある。