近年のサウナブーム。「ととのう」快感は最高ですが、そのときは疲れが取れても、心の奥のモヤモヤが消えないことはありませんか? もしそうなら、あなたが次に必要なのは、脳と心をダイレクトに休ませる体験かもしれません。
この記事では、お寺だからこそ味わえる新感覚の深いリラックス状態「やすらギまる」について解説します。サウナとの決定的な違いとは? なぜお寺に行くと心が静まるのか? その秘密である科学的な「Awe(畏敬)体験」のメカニズムと、初心者でも簡単に「やすらギまる」ための3ステップをご紹介します。/ 文・KENLOCK
◼︎「ととのう」だけじゃ足りない、あなたへ
空前のサウナブーム。「サ活」で汗を流し、水風呂でキュッと引き締め、外気浴で「ととのう」快感。最高ですよね。体の疲れが吹き飛び、頭がスッキリするあの感覚は、現代人の必須科目になりつつあります。
でも、こんなふうに感じることはありませんか?
「ととのった直後はスッキリしたけど、心の奥のモヤモヤがすぐ現れる」
「漠然とした将来への不安や、人間関係のストレスがまだ残っている」
もしそうなら、あなたが次に必要なのは、身体的なリフレッシュだけでなく、脳と心をダイレクトに休ませる体験かもしれません。
それが、お寺で体験できる新しいリラックス状態、「やすらギまる」です。
今回は、サウナの次のステージとして注目される、この不思議な感覚について解説します。
1. そもそも「やすらギまる」ってどういう状態?
「やすらギまる」とは、寺活(お寺での活動)を通じて得られる、「深い安心感に包まれ、心が凪(なぎ)のように静まり返った状態」のことです。
ただ「のんびりする」のとは少し違います。
例えば、日常生活では常に「あれもしなきゃ」「これもしなきゃ」と、脳がアイドリング状態で回転し続けています。それがお寺という特殊な空間に身を置くことで、強制的にスイッチがオフになり、張り詰めていた心の緊張が「ふっ」と解ける瞬間。
まるで、大きな何かに守られているような、根源的な安らぎを感じる状態。それが「やすらギまる」です。

2. サウナの「ととのう」と、お寺の「やすらギまる」の違い
では、サウナの「ととのう」と何が違うのでしょうか? どちらも最高のリフレッシュですが、アプローチする場所が異なります。
サウナの「ととのう」=【身体・自律神経】のリセット
サウナは「熱さ」と「冷たさ」という強い刺激を体に与えることで、強制的に交感神経と副交感神経のスイッチを切り替えます。その結果、血流が良くなり、自律神経が整い、深いリラックス状態(ととのう)が訪れます。
これは、いわば「身体からのアプローチ」による快感です。
お寺の「やすらギまる」=【脳・心(エゴ)】のリセット
一方、お寺には強い刺激はありません。あるのは、圧倒的な静寂、数百年続く歴史の重み、木造建築など伝統的な叡智を感じやすい環境です。
こうした環境に身を置くと、私たちは理屈抜きに「うわぁ、何か自分の悩みがちっぽけに思えるような大きな存在の力があるかも…」という感覚になります。この時、脳内では、普段私たちを悩ませている「自分(エゴ)」への執着が薄れています。そして思い切って、この環境に「ゆだねてみよう」と思うことで、深いやすらぎ状態を得ることができます。
これは、「環境(空間)からのアプローチ」による、精神的な解放感です。
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サウナ:体がシャキッとして、爽快!
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お寺:心がシーンとして、穏やか。
どちらが良い悪いではなく、その時の自分に必要なリセット方法を選ぶのが、大人の賢い休息術です。

3. なぜお寺で心が静まるの? 秘密は「畏敬(いけい)の念」
なぜお寺に行くと、そんな不思議な感覚になるのでしょうか?
最近の心理学研究で、その鍵が「Awe(オウ=畏敬の念)」という感情にあることが分かってきました。
Aweとは、大自然の絶景や、宇宙の広がり、歴史的な偉業など、自分の理解を超えた「なにか大きなもの」に触れた時に感じる、感動と恐れが入り混じったような感覚のことです。
お寺の荘厳な空間でこの「Awe」を感じると、私たちの脳はこう反応します。
「自分なんて、ちっぽけな存在だな」
こう聞くとネガティブに感じるかもしれませんが、実はこれが最大の癒やしになります。
「自分がちっぽけだ」と感じることで、それまで抱えていた悩みやストレスも相対的に小さく感じられ、「私が世界を背負わなくてもいいんだ」という、肩の荷が下りたような深い安心感につながるのです。
この「エゴ(自我)からの解放」こそが、「やすらギまる」の正体です。

4. 初心者でもできる!「やすらギまる」ための3ステップ
難しい修行は必要ありません。次の週末、近くのお寺で試せる簡単なステップを紹介します。
Step 1:切る(OFF)
日常・デジタルのスイッチを物理的に遮断する。
お寺は、日常と非日常を分けるデトックス環境です。ここをくぐる前に、スマホはカバンの奥底へしまいましょう(できれば機内モードに)。物理的に情報を遮断することが、脳を休ませるための第一歩です。たとえば、礼や手を合わせる動作、手水舎で手を洗う行為も、日常のストレスを洗い流すスイッチだと意識してみましょう。
Step 2:没頭する(DIVE)
「今、この瞬間」に深く潜り込み、全集中する。
美しい庭園、仏像の穏やかな顔、風に揺れる木の葉。何でも良いので、対象をひとつ決めて、ただぼーっと眺めてみてください。頭の中で言葉にするのをやめ、感覚だけに集中します。本格的な体験をしてみたい方には、読経や坐禅体験もおすすめです。ただ漫然と受け身でいるのではなく、読経の音の渦や、座禅での自分の呼吸に、意識的に深く潜り込んでみます。「今、ここ」に没頭することで、雑念が入り込む隙間をなくしていくのです。
Step 3:ゆだねる(AWE)
圧倒的な存在を前に、ちっぽけな自分を明け渡す。
没頭の果てに、ふと顔を上げると、そこには歴史の智慧に裏づけられた、建築、仏像、神聖な空間が広がっています。幾多もの人々の心を救ってきた叡智があります。お線香の香り、静寂、歴史の空気感。その場に自分を同調させるように、力を抜いて深呼吸します。
「お寺って1000年以上、数えきれない人の心を救ってきた智慧が詰まってる場所なんだな。すごいな」
そんな畏敬の念(Awe体験)に打たれた時、自力でどうにかしようとする力が抜け、「もう、おまかせしよう」と何か大きな存在に心をゆだねることができるようになります。この「ポジティブな降参」の先に訪れるのが、究極のリラックス状態=やすらギまるなのだと考えています。「何か大きなものに包まれている」あるいは「守られている」感覚を味わえたら、それが「やすらギまった」合図です。

まとめ:次の休日は、脳の深呼吸をしに行こう
サウナで体を整えるように、お寺で心を整える。
現代社会の荒波を生き抜く私たちには、そんな「脳の避難所」が必要です。
今度の休日は、サウナハットの代わりに、少し静かな心を持って、近くのお寺へ出かけてみませんか?
きっと、想像以上に深い「やすらぎ」が、あなたを待っているかもしれません。
