「寺イク?公認寺活レポーター」がお寺に伺い、心をととのえ、「やすらギまる」秘訣を伺う新コーナー「ご自愛寺トリップ」。
初回は品川大崎の春雨寺に伺いました。
住職は、グローバル視点での役職まで、歴史の深浅(古今)とビジネスとエンタメの最前線で活躍してきた異能の人物です。
京都芸術大学の副学長や国連の平和活動に関する重職を歴任するだけでなく、取材当時も京都黄檗禅宗 瑞芝山 閑臥庵相談役や德川宗家事務所相談役等の歴史を重んずる役職から、日産グローバル相談役や世界連邦国会委員会青年会議顧問、国連NY本部国連合唱団委員長補佐、日本プロジェクションマッピング協会の副会長等に就かれていました(な、長い・・)。

なぜ、最先端のビジネスを手掛けるトップランナーが「お寺」の住職に就いたのでしょうか。そして、タイパやSNSに疲弊する現代の若者にとって、お寺はどのような場所になり得るのでしょうか。
今回は、地球の半径以上、お遍路を巡った寺活マスターのMASAKIと、「寺イク?公認寺活レポーター」に就任した内藤知香さんが春雨寺を訪問。型破りな取り組みの裏にある深い哲学と、現代社会を生き抜くための「センス」の磨き方に迫りました。
【PROLOGUE】異空間への入り口。お遍路マスターと新米レポーターの出会い
内藤知香(以下、内藤): えっ……マップだとここを指しているんですが……本当にここ、お寺ですか?
(見上げる先には、近代的な8階建ての立派なマンション。従来の「お寺」のイメージとはかけ離れた外観に、内藤は目を丸くする)
MASAKI: 内藤さんですね。初めまして、お遍路マスターのMASAKIです。驚きますよね。ここが今日の舞台、「春雨寺」です。
内藤: あ、初めまして! 今回から寺活レポーターに就任した内藤知香です。いきなり想像していた『お寺』のビジュアルと違いすぎて、かなり戸惑っています(笑)。

MASAKI: 無理もありません。今日の丹羽住職は、ただの住職じゃありませんから。ビジネスの最前線からエンタメまで仕掛ける、規格外の方です。今日は僕が「ご縁」や伝統の視点から切り込むので、内藤さんはぜひ「五感」や「デトックス」の視点からガンガン質問してみてください。
内藤: はい! 脳が疲れている現代の若者に刺さるお話、しっかり引き出したいと思います。なんだかワクワクしてきました!
MASAKI: では、未知の体験へ。行きましょうか。
お寺に入って出迎えてくださったのは、一般的にイメージされるお寺の住職とは全く異なるファッショナブルな装いの方。一同、お洒落なお寺空間にも面食らいつつ、インタビューがはじまりました。
■ 汗をかかず「システム」を作る。規格外のキャリアとお寺の運営

MASAKI: 丹羽住職のプロフィールを拝見し、本当に驚きました。グローバル企業の相談役など、ビジネスやエンタメの最前線にいらっしゃいますが、どのような経緯で「お寺」の住職という道を選ばれたのでしょうか?
丹羽住職(以下、丹羽): 実は最初から住職を目指していたわけではないんです。ご縁があってこのお寺の運営をサポートするようになったのですが、関わる中で「お寺という空間には、まだまだ進化できる大きなポテンシャルがある」と強く感じたんです。
今はAIに歴史を聞けば、すぐに答えが返ってくる時代です。単に歴史のエビデンスを語るだけの場所なら、もう必要ありません。これからは、その空間が放つ心地よい「周波数」や「センシビリティ(センスの力)」、そして住職自身の人間力が問われる時代になります。自分自身が進化し続けることで、この古い業界に新しいモデルを作れる。そう確信したからこそ、この職業をやろうと決意しました。

MASAKI: お寺の運営やビジネスモデルについても、これまでのご経験を活かされているのでしょうか。
丹羽: そうですね。私は霞ヶ関の内閣府の目の前にインキュベーションセンターを作り、国連の女性やスタンフォード大学関係者、日産グローバルの社長たちとサロンを作って支援してきました。私自身、ずっと汗をかいて働くのは嫌いで、「システム」を作るのが得意なんです。例えば広告会社にいた頃、日本国内ほぼ全ての映画館(シネコン)で流れるコマーシャルの枠をネットワーク化し10億円以上を売り上げていました。また広告会社退社後もその売上のうち3%をいただく契約をしていました。だから、お寺のお金を使うのではなく、自分自身のお金を貸し付ける形でお寺に入れ、そこでワインやシャンパン販売事業などしているんです。檀家さんのお金を当てにしてバンバン何かをする、ということは全くやっていません。
MASAKI: それが「新しいお寺の形」に繋がっていくのですね。

丹羽: はい。次年度には「寺内(てらない)ベンチャー」として『株式会社マチャック(ニコラ・テスラが飼っていた猫の名前。この猫を撫でた際に静電気から電気を発見したといいます)』を立ち上げました。飲食事業や不動産事業など営利事業をドライブさせ、そこで出た利益をお寺の収入にする。お布施の事業モデルだけで生きていける時代は終わります。檀家さんからなるべくお金や管理料をもらわなくて済む、檀家さんのご負担をできる限り軽減できる自立したビジネスモデルを目指しています。
■ シガーバーにコンサート。五感で味わう「Temple of the Arts」
内藤: 今回、寺活レポーターになった内藤です。お寺も心身のバランスをととのえる場所だと思いますが、住職はどのようにお寺の「ととのえる」空間づくりを考えられていますか?

丹羽: 私は世の中の事象を「サイエンシーズ(科学)」と「アーツ(芸術・哲学)」の2つに分けて考えています。豊かな心や「ととのえる」ということは、まさに哲学ですよね。だからこそ、春雨寺は「Temple of the Arts(アーツのお寺)」をテーマに掲げているんです。日本のお寺は、観光か法事の時しか行かない場所になりがちです。でも私は、生きている時から穏やかで時間を忘れてここにいたいと思い、亡くなった後もここにいたいと思えるのが「お寺」だと思うんです。子孫の方々が来てのんびりカフェをしたりバーに行ったりして、「自分も死んだらここに行きたいな」と思う。それが「ととのえる」という意味でのテーマになると思います。
内藤: 春雨寺さんには「シガーバー」があると伺って驚きました! 香りや流れる時間を味わう、究極の大人のマインドフルネスですね。

丹羽: そうなんです。どうやったら「行きたいお寺」になるかを考え、本堂のホールでチャリティコンサートを開いたり、先日は被爆ピアノと津波バイオリンのコンサートを開催したりもしました。シガーバーもその一つです。ドミニカ共和国の大臣経験者が作ったシガーを味わえるなど、きっかけはちっちゃくてセンセーショナルでいい。そこで「えっ?」と興味を持ってもらいながら、お寺としての本質は決して失わない。それが私たちのテーマです。
■ 全ての宗派を受け入れる。文化が交差する「平和構築」の拠点
MASAKI: お遍路も人と土地のご縁を繋ぐ旅ですが、シガーバーやコンサートなど、お寺をハブとした取り組みを通じて、どのような「ご縁」が生まれていると感じますか?

丹羽: 面白いことに、春雨寺はおそらく日本で一番「青いナンバープレート(外交官車両)」が来るお寺だと思います。単立寺院なので宗派の垣根がなく、キリスト教の司祭が夜中まで楽しんでいくこともあります。全ての人を受け入れ、敬意を持ってお付き合いすると決めているんです。私は以前、京都芸術大学で「京都国際平和構築センター」を設立し、初代会長を務めました。芸術文化(アーツ)が直接戦争を止めることはできなくても、「殺し合うことに躊躇する状況」をつくることはできると信じています。「平和であってほしい」という願いがあるからこそ、外交官の方々もここを訪れる。アーツをテーマにするためには、まず「受け入れる」ことから始めなければいけません。
■ 他人の評価に振り回されない。Z世代へ贈る「センス」の磨き方

内藤: たくさんの貴重なお話ありがとうございます。タイパを求められ、SNS疲れで疲弊している20〜30代の若者たちへも、心をととのえて生きていくためのヒントをお願いします。
丹羽: まず「SNS疲れ」というのは、私たちが「システム」に合わせて生きようとするから疲れるんです。SNSの「いいね」の数やアルゴリズム、誰かと比べる仕組みといった外部のルールに支配されると、どうしても息苦しくなりますよね。でも、自分の頭の中だけで好きなことを想像している時って、全く疲れないはずです。
今は、AIに聞けば歴史の事実や正解はすぐに出てくる時代。単なる知識はもう武器になりません。これからの時代に求められるのは、知識の上で自分なりに物事を感じ取る「センシビリティ(センスの力)」です。
世の中のシステムや他人の評価に振り回されるのではなく、「自分はこれが素晴らしいと思う」と自身のセンスで判断できる軸を持つ。それさえあれば、人は絶対に疲弊しないので、若い人たちの心を「ととのえる」ことにつながるのではないでしょうか。
MASAKI: 非常に面白いです。エンタメやテクノロジーを知り尽くした住職から見て、これからの「お寺」はどうあるべきでしょうか。

丹羽: お寺というスピリチュアルな空間も、AIやXRなどの科学技術を肯定し、最大限に使ってもらっていい場所だと思ってもらうことが大切です。私は檀信徒の方々を「エヴァンジェリスト(伝道師)」と呼んでいます。Appleのスティーブ・ジョブズたちが重視したのは、機能性ではなく「どうやってセンシビリティをくすぐるか」でした。サイモン・シネックのゴールデンサークルのように、哲学から入る。お寺も同じで、文化人やスポーツ選手が「カッコよく」使ってくれるようなアプローチが必要です。とにかくお寺に来た時にカッコよくあること、センス的であることが、新しい仏教や神道の未来に繋がっていくと信じています。
【こぼれ話:これぞ究極のご自愛体験!】
ビジネスの最前線で培われた圧倒的なシステム構築力と、シガーバーやコンサートに見られる「アーツ(芸術・哲学)」への深いリスペクト。相反する要素が美しく同居する春雨寺の空間は、まさに現代社会の新たなサードプレイスでした。「システムに支配されず、自分のセンスを信じる」。丹羽住職からの力強いメッセージは、情報過多な時代を生きる私たちにとって、デトックスのヒントとなるはずです。さらにインタビュー終了後、幸運にも春雨寺が目指す「Temple of the Arts」の真髄を体験することができました。今回、特別に丹羽住職から「せっかくですから」と、絶品の手巻き寿司や珍しいシャブリ地方のビールをご馳走になったのです。




洗練されたお寺の空間で、美味しい食とお酒をいただきながらリラックスして語り合うひとときは、まさに至福の時間。張り詰めていた心の糸がスッと解け、自分自身の「周波数」が心地よくととのっていくのを肌で感じました。ストイックに自分を追い込むだけがお寺ではありません。美味しいものをじっくりと味わい、閉じていた感性を開く。それもまた、現代を生きる私たちに必要な「究極のご自愛」なのだと、春雨寺が教えてくれました。普段は檀信徒さんと会員の方にのみ開放する特別なお寺空間とのことですが、日本のお寺体験の未来に期待が高まる一夜でした。
そして、あまりに居心地がよかったので、一同終電を逃して、帰りに慌てふためいたことは住職には内緒です。
「ご自愛寺トリップ」、次回も乞うご期待ください。
PROFILE
内藤 知香(ないとう はるか)
YouTube番組のMCアシスタントや、アスリートフードマイスターとしてスポーツ・食に関する発信で活躍するほか、頂マーラータン|サウナ専用食 サ飯マーラータン 公式アンバサダー、一般社団法人 全国サ飯協会のサ飯大使を務めるなど、現代人の“ととのう体験”に造詣が深い。情報発信の最前線にいるからこそ感じる「デジタルデトックスの必要性」を、独自の視点でレポートします。(Instagram:@naito_haruka )
写真/KENLOCK(寺イク?)
文・編集/KENLOCK(寺イク?)