「お寺に行って心を落ち着けたいけれど、見知らぬ人間がいきなり行っていいのかわからない…」
「お参りの作法が分からなくて怖い和尚さんに怒られそう…」「推しのチケット祈願目的で、お寺に行くのは不純?」
そんな不安から、お寺に行くのを足踏みしている“寺活ビギナー”のみなさんに朗報です。実はお寺の歩き方に、窮屈な「ルール」はありません。今回は、お寺の敷居をグッと下げてくれる心強い内容をお届けします。
舞台は、神奈川県相模原市の山あいに佇む古刹。臨済宗 建長寺派 熊野山 祥泉寺(しょうせんじ)。康永元年(1342年)頃に創建され、約700年の歴史を持つ由緒正しき寺院です。尾崎行雄(咢堂)の生家の菩提寺として知られ、津久井三十三所霊場の第12番札所でもあります。
本日は、気さくでおしゃべり大好きなご住職と、地球の半径以上の距離お寺を巡り、四国お遍路7周目に突入する「寺イク?」監修メンバーで寺活マスターのMASAKI、そして編集長(KENLOCK)で語り合いました。

祥泉寺の山門
実はこのお寺、寺活マスターMASAKIが12年前に「寺活」に目覚めた原点の場所でもあります。そして今まさに、コロナ禍を乗り越えて「12年ぶりの特別な秘仏のご開帳」が始まろうとしています。「作法より、気が合う場所を見つけるのが一番!」と笑う住職の言葉に、きっと今週末、ふらっとお寺へ出かけてみたくなるはずです。

祥泉寺の山門のポスター
■ 【PROLOGUE】新緑の山あいへ。12年ぶりに扉を開く、MASAKIの原点
都心から車を走らせること約1時間。窓を開けると、初夏の風と共に青葉の匂いがすっと車内に入ってきます。神奈川県相模原市・津久井エリア。かつては絹の道として栄え、今も豊かな自然と静かな集落が点在するこの地に、「津久井三十三観音霊場」はあります。

祥泉寺の山門で懐かしそうに目を細めるマスター
普段はひっそりとした山あいのお寺ですが、今は特別なお祭りのような空気に包まれています。
「いやあ、懐かしいですね。僕が初めてお寺の魅力にハマったのが、ちょうど12年前のこのご開帳だったんです」
そう言って目を細めるのは、今や四国お遍路を7周するほどの猛者となった、「寺イク?」監修メンバーのMASAKIです。当時、地域の歴史を調べていて偶然立ち寄ったこの場所で、お寺の温かさとお接待の文化に触れ、人生が変わるほどの衝撃を受けたといいます。

祥泉寺の境内
そんな彼の“原点”の場所。笑顔で出迎えてくれたのは、12年前と変わらず温かく迎え入れてくれる気さくな住職です。お茶をいただきながら、のんびりとした空気の中で、気がつけば時間を忘れてしまう楽しいおしゃべりが始まっていきました。
──(KENLOCK) 本日はよろしくお願いします。普段、なかなかお話を伺えない12年振りの特別な機会ということでワクワクします。そもそもこの「津久井三十三観音霊場」はどのような歴史を持つ場所なのでしょうか?
住職: 今から300年くらい前の江戸時代にできた霊場です。当時の移動は徒歩が基本だから、無駄なく「一筆書き」で回れるようなルートになっていたみたいですね。実は、うちのお寺は本通りから外れていたから、最初はその33ヶ所に入ってなかったんですよ。

祥泉寺のご住職
── え! そうなんですか?
住職: 大正から昭和の初め頃かな、近所の札所が合併してうちにやってきたんです。車が使えるようになって、「ちょっと離れててもいいか」ってことになったんでしょうね。
この霊場、本来は12年に1回の「午年(うまどし)」にだけご開帳(※秘仏の扉を開いて特別にお参りできるようにすること)をするんだけど、12年だと長すぎて「次来る時は生きてないかもしれない」っていうお年寄りの切実な声がありましてね。それで間を取って、6年に1回の中開帳もやるようになりました。
── なるほど。でも今回は、ずいぶん久しぶりのご開帳になると伺いました。
住職: そうなんです。前回の本開帳がちょうどコロナの入り口だったんで、お年寄りがバスで回るのはさすがに危ないということで中止になったんです。だから今回は、実に12年ぶりの開催。待ちに待ったご開帳という感じで、我々も気合いが入っていますよ。

中央が、秘仏の観音像がおさめられている黒い木箱
■ 「お茶とおしゃべり」から始まった寺活の沼
MASAKI: 実は私、12年前に初めて「寺活」というものに参加したのが、まさにこの津久井の霊場のご開帳だったんです。当時、知り合いに「こんなのがあるよ」と聞いて行ってみたら、すっかりハマってしまって。

住職: そうそう。MASAKIさんは歴史の調べ物で来てくれてね。うちは田舎のお寺で普段は観光客がバンバン来るわけじゃないから、ご開帳みたいに「どうぞ来てください」って公に開けている時は、せっかく来たんだからお茶でも飲んでいってよ、っていう感覚でお迎えするんです。
MASAKI: その「お接待(お茶やお菓子のおもてなし)」が本当にすごくて(笑)。普段は絶対に入れないような本堂に入れてもらえて、しかも住職さんと30分くらいずっと雑談をして。京都の有名な観光寺院とは違う、この“距離感の近さ”が楽しくて、そこからどんどんお寺巡りにのめり込んでいきました。
住職: ただお茶飲んで雑談してただけなのに、まさかあの時の縁が繋がって、今お遍路を7周も回るような人になるとはね(笑)。
■ 「おやつ目当て」でも「推し活」でもいい。きっかけは自由
── 若い世代でも、お寺に興味はあるけど敷居が高いと感じている初心者は多いと思います。どこから手をつけていいか分からない人へアドバイスはありますか?
住職: 最初から「お遍路を全部回ろう!」「作法を完璧にしよう!」なんて重く考えなくていいんです。いきなりハードルを上げると、どこかでつまづいたら嫌になっちゃうでしょ? きっかけは何でもいいんですよ。
例えば、お墓参りについてきた子供にお茶菓子をあげたりする。そうすると「お寺に行くとおやつがもらえる」って覚えるじゃないですか。別に立派な教えを聞かなくても、「お寺に行って嫌な思いをしなかった」という記憶が残れば、それで十分なんです。

── 「推し活」のチケット当選祈願でお寺に行く若者も増えていますが、そういう目的でもいいんでしょうか?
住職: 全然いいですよ。私の知り合いでも、親の病気をきっかけにフラッと祈祷を受けに行って、そこから毎年お参りするようになった人がいます。「お守りをもらったらなんかホッとした」とか、そういうちょっとしたきっかけで、「あれ、こういうのもいいかも」って思えればいいんです。
■ 正解はない。自分と「気が合うお寺」を探せばいい
── 自分に合ったお寺を見つけるコツはありますか?
住職: 人間関係と同じで、「気が合うか合わないか」が一番大事なんじゃないかな。気が合う人といた方が心が安らぐでしょ? お寺も同じです。
「ここの雰囲気が自分にちょうどいいな」と思う人もいれば、「私のおしゃべりを聞いてるのが楽しい」って人もいるかもしれない(笑)。逆に、山奥のしんと静まり返ったようなお寺がたまらない、っていう人もいる。

── 「立派なお坊さんがいるから正解」というわけではないんですね。
住職: そうそう。お坊さんだっていろんな人がいるからね。「このお坊さんなんか合わないな」と思ったら、離れちゃっていいんです。無理して嫌なものに近づく必要はない。
だからこそ、今回のご開帳みたいにオープンになっている機会を利用して、何軒か巡ってみるのがおすすめですよ。1対1になりすぎずに、フラッと見れるからね。
MASAKI: 確かに、いきなり1対1だと敷居が高いですが、ご開帳やイベントの時なら、ただお参りに来た人の一人としてスッと入れますもんね。初心者の方のお試しにはぴったりです。
■ デジタルな日常の対極にある、「余白」としての空間
── スピ活みたいにお寺や神社に行く若者も増えてきていますが、現代の若者にとってお寺はどういう存在になれると思いますか?
住職: 今はスマホが手放せなくて、常に便利なものに囲まれてる時代ですよね。世の中が便利になりすぎたせいで、お寺が急に「対極にある場所」みたいに目立つようになってきたんだと思います。だから、疲れた人たちがその「ギャップ」を求めてやってくる。
うちは有名なお寺みたいに敷居が高くないし、なんか緩やかだから(笑)。たまにはこういうのんびりした場所で、ただお茶を飲んで雑談して、少しでも心がホッとしてくれたら、我々としてはそれが一番嬉しいですね。

── 何かを得ようと焦らなくても、ただそこにいるだけで許される。まさに現代人に必要な「余白」の場所ですね。
MASAKI: 12年前の私がそうだったように、ふらっと立ち寄った「寄り道」が、人生を豊かにする一生の趣味になるかもしれません。本日は楽しいお時間を本当にありがとうございました!
【特別告知】12年ぶりの大チャンス!「津久井三十三観音霊場」ご開帳
今回インタビューに登場した「津久井三十三観音霊場」にて、コロナ禍を経て実に12年ぶりとなるご開帳が開催されます!

普段は閉ざされている秘仏の扉が開き、お寺が広く一般にオープンになる貴重な機会です。ゴールデンウィーク明けの混雑を避けた日程で開催されるため、初夏のドライブやツーリング、のんびりとした散策にぴったり。霊場巡りとはいえ、いきなり全部コンプリートと肩肘張らずに回れる範囲で滅多に見られない秘仏を観に行くのがおすすめです。
「初めての寺活」の行き先として、ぜひ気さくな住職さんたちに会いに行ってみませんか?




津久井観音霊場の地図

御開帳のポスター
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開催期間: 2026年5月10日〜5月23日(※一部お寺により対応が異なる場合があります)
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場所: 神奈川県相模原市 緑区(津久井エリア)一帯の札所寺院
【PROFILE】
天利 晶紀(あまり しょうき)
津久井三十三観音霊場の第12番札所である臨済宗 建長寺派 熊野山 祥泉寺の住職。気さくでオープンマインドな人柄と、終わらないおしゃべりが名物。地域の歴史と信仰を柔軟な視点で守り続けている。
MASAKI
「寺イク?」監修。四国八十八箇所霊場会公認先達。12年前のご開帳を機に寺活の沼へ。百観音巡りを達成し、四国お遍路はなんと7周目に突入する猛者。寺イク?やラジオなど、独自の視点でお寺のディープな魅力を発信中。