「古舘󠄁節、全開!」「即実践できるマインドセットが盛りだくさん」と、読者からの反響が続々!
メディアでも多数取り上げられ、発売直後から話題沸騰中のアナウンサー・古舘󠄁伊知郎さんの新著『寝ても覚めても煩悩 人生のモヤモヤ、いっしょに悩みます』。
その出版を記念して、現代人の言葉にならないモヤモヤ(=煩悩)を豪快に吹き飛ばしてくれる痛快なトークイベントが、5月23日(土)、東京都港区・虎ノ門にある浄土真宗本願寺派「光明寺」の本堂にて開催されました。

「正解を提示する場ではありません。モヤモヤがすっきり解消するとも限りません。それでも、誰かと言葉を交わすことで少しだけ視界がひらけた。そんな時間をお届けします。」
言葉にならない悩み=“煩悩”をテーマに、次々と飛び出したのは、抱腹絶倒な笑いと“古舘󠄁流・仏教的ライフハック“。思いもよらないパンチライン”の数々でした。単なる一問一答のお悩み相談を超え、現代人が無自覚に抱える生きづらさの正体と、そこから抜け出すためのヒントが詰まった当日の模様を、筆者のリアルな体験記としてお届けします。
■ 「善人100%なんて無理!」親鸞の教えで笑い飛ばす「どうしようもなさ」

趣きのある本堂でイベントが始まり、拍手で迎えられた古舘󠄁さん。まずは、会場である光明寺(浄土真宗)の開祖・親鸞の教えを、噛み砕いた言葉で解説していきます。 師である法然の教えが「悩みだらけで苦しいから助けて」とすがる「ヘルプ・ブッダ(請求書)」だとすれば、親鸞の教えは、手を合わせて『南無阿弥陀仏』と唱えた段階ですでに救われているという「サンキュー・ブッダ(領収書)」であると古舘󠄁さんは語ります。手を合わせただけで救われていると考えるから、仮に「悩みは一切解消しなくても、手を合わせて感謝する段階で悩みは減少する」と捉えられるのだといいます。
そんな親鸞の教えの中でも、古舘󠄁さんが「なかなかのロジックでかっこいい」と紹介したのが、『歎異抄』に記された「悪人正機説」です。
「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや(善人でさえ救われるのだから、悪人はなおさら救われる)」
普通なら「悪人だって救われるんだから、善人は当然救われるでしょう」と思いがちですが、親鸞のロジックは逆です。「善人だって行けるんだから、悪人の方が権利がある」と言い切るのです。
ここで古舘󠄁さんが例に挙げたのが「善100%になりきっている自分」の滑稽さと危うさでした。 孤児院に支援物資を送り、自分はビーガンのヘルシー料理店でオーガニックワインを飲みながら大声で喋るような人。さらに井上ひさしさんの短編小説を引き合いに出し、修道院に支援物資を送りすぎて、断られた上流階級の奥様方の話を挙げます。「放っておくと子供たちが贅沢になりすぎて、社会に出てから大変な勘違いの人間になってしまうから、もうご勘弁ください」と修道女から、支援を断られると、「いいことをやっているのに!」と逆ギレしたというエピソードです。これこそが「自分は善100%だ」と思い込む人間の欲望の強さ、業の深さなのだと指摘します。

SNSなどで常に「正しい人間」であることを求められる現代ですが、人間の中には必ず欲望やずるさ(悪)が存在します。 古舘󠄁さんは軽快な語り口で、自らの「業(エゴ)」を客観視し、笑い飛ばしていきます。
古舘󠄁さん自身も、勢いで買ったばかりの高級時計を人にプレゼントして「やっぱ惜しい」と後悔するような俗っぽさがあると言い、「自分の中の『どうしようもなさ』を認めてしまうこと」の重要性を説きました。
この「抗えない自分(業=カルマ)を受け入れる」というテーマは、この後に続く参加者からのリアルな悩みにも直結していきます。
「好きな人に女性として見られたいのに、いつも『お袋みたいだ』と言われてしまう」という53歳女性の切実な相談に対し、古舘󠄁さんは「あなたには、無意識のうちに相手を包み込む『お母さん的な気質(業)』がある」と分析。そこから逃げようと抗うのではなく、むしろ「私=お母さん」という役割を100%丸呑みして受け入れることを提案しました。
どん底まで受け入れて肩の力が抜けると、その気質が80%くらいにスッと縮む。そして「空いた20%の『隙間』にこそ、ふっと自然な『女性』の部分が宿るんです」という逆転の発想。無理して自分を変えるのではなく、受け入れることで生まれる視座の奥深さを窺えました。
■ 脳内での大喧嘩? 不完全な「隙間」と無駄を面白がる効用

「働きたくないけど、豪華客船で海外旅行に行きたい」という60歳女性の人間らしい葛藤に対し、古舘󠄁さんは脳科学の視点から「理屈で『働かなきゃ』と考える左脳と、感覚で『旅行したい!』と叫ぶ右脳が喧嘩している状態」と見立てました。
「無理に借金をして海外へ行っても、心からは楽しめないはずです。まだ葛藤しているということは、現実を見ている『左脳』に足場がある証拠。まずは左脳に従って、当座の旅行資金を貯めましょう。その代わり、感覚を求める『右脳』を満たすために、日常の中で『小さな旅』をするんです」とアドバイスする古舘󠄁さん。ここでいう小さな旅とは、家の近所の横丁を曲がって、野良猫の匂いや草いきれを感じること。遠くの理想(海外)ばかりを追うのではなく、今ここにある日常のディテールを味わい尽くす粋な提案でした。
また、「人前でプレゼンなどをする際、どうしても噛んでしまう」という相談者に対しては、「AIじゃないんだから噛むんですよ!」と小気味よく悩み自体をポジティブに変換していきます。完璧に淀みなく喋るAIはかえって人間に不気味さを与えるといいます。
また、人間が「えー」とか「あー」言い淀むその『間』を、聞いている人が心の中でフォローしてあげる。「それを仏教的に言うと「慈悲」まで行くんです。慈しみに悲しむという。だから相手もちゃんとその気持ちを返してくる。」というように、人と人が「補填し合うこと」がコミュニケーションの原点であると指摘しました。
完璧に喋ろうとするのではなく、自らの「言い淀み」や「不完全さ」を許す。この「あえて無駄なもの、完璧じゃないものを面白がる」という視点は、趣味に対する考え方にも通じます。
「集めているカードの価値が上がったり下がったりで心が揺れる」という悩みに、古舘󠄁さんは「仕事がタイパを求めるものだとしたら、趣味とは本来『無駄に時間を潰す』ためにあるもの」と喝破しました。
目の前に本物のベンツがあったとしても、純粋な気持ちで小さなミニカーを迷わず選ぶ子どものように、効率や結果から離れ、ただ無駄な時間を大肯定して楽しむこと。それこそが、効率至上主義的な現代社会における一番の贅沢な心持ちなのだと気づかされました。
■ AIと喧嘩して気づく「諦め」—間違いだらけの世界を遊ぶ

イベントの終盤、熱を帯びた本堂で語られたのは、人間の「限界」を認めることの清々しさでした。
「AIの進化についていけない」と悩むエンジニアに対し、古舘󠄁さんはChatGPTと喧嘩した抱腹絶倒のエピソードを披露しました。ある夜、代官山で見かけた大使舘󠄁の国旗について質問したものの、AIがお茶を濁した回答をしたため、激怒して自らGoogle検索で調べ上げます。すると結局、AIの回答が正しかった。「あんたの勝ちだわ」とAIに降伏したという顛末でした。
その体験を通して「AIは僕自身の『自我』を映す鏡だ」と悟った古舘󠄁さんは、仏教における「諦める(明らかに見極める)」という境地を提示します。

「AIと同じ速度になり得ない生身の人間なんだから、ふっと無精になった方がいい。バカになるのもありですよ。だって我々はバカなんだから!」
最後に、理不尽なクレームに怒ってしまうという相談には、「空の浴槽で釣りをする患者にキレられた精神科医」や「道順はお任せと言って爆睡したのに料金にキレるタクシー客」などの小噺を交えながら、「人間はそもそも頭でっかちで間違った動物。自分も相手も間違っている。たまには間違いだらけの世界を適当に生きるのも大事です」と優しく語りかけました。

「煩悩」や「仏教」などと聞くと、私たちはどこか自分とは遠い、厳格な教えだと身構えてしまうかもしれません。しかしこの日、古舘󠄁伊知郎さんという「生きる喋りの伝説」を通して語られたそれは、現代社会の息苦しさや生きづらさを笑い飛ばし、私たちの「どうしようもない煩悩」を丸ごと抱きしめてくれる、驚くほど実践的であたたかなライフハックでした。
【INFORMATION】
■ 新著『寝ても覚めても煩悩 人生のモヤモヤ、いっしょに悩みます』

メディアでも多数取り上げられ、「古舘󠄁節、全開!」「即実践できるマインドセットが盛りだくさん」と大反響の最新刊!
YouTubeの人気企画から厳選された18のエピソード(仕事、お金、恋愛など)に加え、若手時代の衝撃エピソード、恩師の一言、初めて明かす子育ての後悔など、古舘󠄁さん自身の人生も赤裸々に綴られています。数々の修羅場を潜り抜けてきた古舘󠄁さんが真っ向勝負で回答する、大ボリューム11万字のお悩み相談本です。
- 著者: 古舘󠄁伊知郎
- 仕様: 四六判・並製・368頁・本文1C
- 定価: 1,980円(10%税込)
- 発売日: 2026年3月12日
- 発売元: 株式会社小学舘󠄁集英社プロダクション
- 商品URL:Amazonはこちら
■ YouTube「古舘󠄁伊知郎の煩悩チャンネル」
古舘󠄁さんが、引き続き視聴者からのお悩みを大募集!誰かに聞いてほしいこと、ずっと心にしまっていたこと、皆さまの「モヤモヤ」をぜひお寄せください。
【PROFILE】
古舘󠄁伊知郎(ふるたち・いちろう)
1954年東京都生まれ。1977年にテレビ朝日へ入社し、プロレス中継で独自の語り口を確立。
1984年にフリー転身後は、F1中継、 バラエティ番組、さらに『報道ステーション』のメインキャスターまで、ジャンルを横断して活躍。NHK+民放全局でレギュラー番組の看板を担った。
現在は、テレビ・ラジオへの出演はじめ、YouTube『古舘󠄁伊知郎チャンネル』、トークライブ「トーキングブルース」、対談ライブ 「古舘󠄁と客人と」 など、自由な喋り手として活躍中。
著書に『喋り屋いちろう』(集英社) 、『伝えるための準備学』(ひろのぶと株式会社)などがある。
写真/KENLOCK(寺イク?)
文・編集/KENLOCK(寺イク?)