「おばあちゃんの原宿」こと、巣鴨。失礼極まりない話だが、巣鴨に対してそんな印象を持つ人も少なくないのかもしれない。しかし、それは巣鴨のほんの一側面でしかない。日々ストレスと戦い、サウナで汗を流しているような大人たちにとって、ここは都内屈指の「リトリートな隠れ家」であることはあまり知られていないだろう。
昭和レトロな活気が混ざり合う商店街を歩き、お寺にお参り、最後は老舗の蕎麦屋でキュッと冷えたビール。こんな営みを通じて、懐かしさとあたたかい気持ちが沁み渡ってくる。心も胃袋も満たされる。さあ、そんな巣鴨・寺活の日帰りリトリート旅をお届けしよう。
■ 商店街の入り口「眞性寺」と、隣に佇む「巣鴨寺」で心のスイッチをオフに

巣鴨駅を降り、地蔵通り商店街の入り口に差し掛かると、まず目に飛び込んでくるのが笠を被った大きなお地蔵様。ここが第一の目的地、「醫王山 東光院 眞性寺(しんしょうじ)」だ。
江戸六地蔵のひとつに数えられる立派な銅造地蔵菩薩坐像に手を合わせると、街の喧騒からスッと切り離され、強制的に心のスイッチがオフになる。お参りを済ませ、力強い筆運びの御朱印をいただき、本日の寺活がスタートした。



続いて、眞性寺のすぐ裏手にある次なる目的地「龍鋒山 巣鴨寺」へ。




ここでお参りしたのは「巣鴨不動尊(ぼけ封じ不動)」と、水をかけてお参りする「しあわせ地蔵」。静かな境内で、お地蔵様にたっぷりと水をかけながらそっと手を合わせる。水を静かにかける涼やかな音は、心についた日常の埃をさっぱりと洗い流してくれるえも言われぬ爽快感があった。
📍 SPOT INFO:眞性寺(しんしょうじ)
アクセス: JR・都営三田線「巣鴨駅」から徒歩約1〜2分
特徴: 真言宗豊山派のお寺。境内に鎮座する高さ3m近い大きなお地蔵様は「江戸六地蔵」の第4番として知られる。
📍 SPOT INFO:龍鋒山 巣鴨寺 福寿観音
アクセス: JR・都営三田線「巣鴨駅」から徒歩約2〜3分(眞性寺のすぐ裏手)
特徴: 真言宗智山派のお寺。珍しい容貌の不動明王尊(巣鴨不動尊)や、身代わりのしあわせ地蔵が安置されている。
■ 病や心の「とげ」を抜く。巣鴨のシンボル「とげぬき地蔵」と「洗い観音」







にぎやかな商店街の懐かしい空気に包まれながら歩みを進めると、3ヶ所目の目的地にして、巣鴨の代名詞とも言える「とげぬき地蔵」こと高岩寺(こうがんじ)が見えてくる。
このお寺が「とげぬき地蔵」と呼ばれるようになったのには、江戸時代から伝わる不思議な由来がある。ある時、毛利家の女中が誤って針を飲み込み苦しんでいた。そこで、地蔵菩薩の姿を描いた小さな和紙(御影)を水で飲ませたところ、なんと飲み込んだ針が御影に刺さった状態で吐き出され、一命を取り留めたというのだ。以来、物理的な「とげ」だけでなく、病や心の「とげ」まで優しく抜いてくれるお地蔵様として、人々の厚い信仰を集めるようになった。
そんなエピソードを思い出し、本堂で手を合わせると、自分の中に刺さった見えないストレスの「とげ」も抜いてもらえたような気がしてくる。その後、列に並んで向かったのが名物「洗い観音」だ。
先ほどの水かけ地蔵に続き、今度は自分の体の悪いところ、治したいところと同じ観音様の部位に水をかけ、布で優しくキュッキュと磨いていく。洗い観音は「聖観世音菩薩」の石像。周囲の参拝者たちと順番を譲り合いながら「どうか良くなりますように」と念じるこの時間は、極めてマインドフルネスなひととき。他のお寺にはない、温かい一体感と優しさがそこには満ちていた。
📍 SPOT INFO:とげぬき地蔵尊 高岩寺(こうがんじ)
アクセス: JR・都営三田線「巣鴨駅」から徒歩約5分
特徴: 曹洞宗のお寺。本尊の「延命地蔵菩薩(秘仏)」は病の平癒に霊験あらたかとされ、境内にある「洗い観音」には毎日多くの人が列を作る。
■ 寺活のシメは「大橋屋」の天せいろとビール。これぞ至高の「寺活飯」

眞性寺、巣鴨寺、とげぬき地蔵。たっぷり三箇所のお参りと御朱印巡りを終え、すっかり心のとげが抜けたところで、いよいよお待ちかねの「胃袋の浄化」タイム。サウナ後の“サ飯”ならぬ、寺活後の“寺活飯”である。
向かったのは、とげぬき地蔵のすぐそばにある老舗「地蔵そば 大橋屋」。
暖簾をくぐり、まずは迷わず瓶ビールを注文。一緒にお願いした「板わさ」をつまみながら、よく冷えたビールを喉に流し込む。たくさん歩き回ったあとの体に、ツンとくるわさびと麦酒の苦味がたまらなく沁みる……!

そしてシメに注文したのが「天ぷらせいろ」だ。サクサクに揚がった天ぷらを頬張り、キリッと冷えてコシのある蕎麦を音を立ててすする。細麺ながら、食べ応えがある。昼から冷酒と蕎麦。この背徳感と多幸感が入り交じる味わいこそ、大人の休日の最適解に違いない。

お参り、水をかけ、歩き、飲み、味わう。
昭和の温もりと人情が残る巣鴨の商店街は、ただ歩いているだけで肩の力が抜け、心のとげをスッと抜いてくれる不思議な魅力を持っている。
商店街から駅に向かうと、老舗カプセルサウナ施設、サンフラワーが悠然とそびえたつ。少し汗をかき、流したい気分だ。宿泊部屋が空いていたら、泊まっていってもいいかもしれない。ついつい唸ってしまう。巣鴨は寺活だけでなく、サウナーにも優しい街なのかもしれない。
たまにはこんな風に、街に息づく空気に身をゆだねる「リトリート旅」を体験してみてはいかがだろうか。

📍 SPOT INFO:地蔵そば 大橋屋
アクセス: 高岩寺(とげぬき地蔵)からすぐ、商店街沿い
特徴: 大正11年創業の老舗のお蕎麦屋さん。とげぬき地蔵参拝後の食事や、美味しいお蕎麦をアテにした昼飲みにぴったりの名店。
写真/KENLOCK(寺イク?)
文・編集/KENLOCK(寺イク?)
※撮影は現地の掲示・参拝導線に従い、通行の妨げにならない範囲で行っています。